ぽん太のよりみち精神科

たんたんたぬきの精神科医ぽん太のブログです。ココログの「ぽん太のみちくさ精神科」から引っ越してまいりました。以後お見知り置きをお願いいたします。

年末の感動!ウクライナ国立劇場管弦楽団「第九」

 今年の年末も、昨年に引き続きウクライナ国立歌劇場管弦楽団の第九に行ってきました。ロシアのウクライナ侵攻も、人々の関心はイスラエル・ガザ戦争に移り、国際社会に支援疲れも出てきているようですが、せめてコンサートに行くことで応援してあげたいところ。

 演奏後には会場に集まった人々のそうした思いも込めた盛大な拍手が送られ、指揮者のミコラ・ジャジューラもちょっと涙ぐんでいるように見えました。

今年は小編成でウクライナ国立劇場合唱団も来日せず

 今回は「運命」と「第九」というプログラムで、大盛りの料理でおもてなしという感じなのですが、ちょっと重すぎてお腹いっぱいの感じがしました。両方とも目一杯の曲ですからね〜。「第九」が何と言ってもメインディッシュということで、1曲目はもうちょっと短い曲でよかった気がします。

 今回はコントラバスが3台というかなり小さな編成でした。昨年のコントラバスの数は覚えてないけれど、日本人奏者がかなり混ざって、もっと大人数だった気がします。今年も日本人が少数混ざってました。

 また前回は合唱がウクライナ国立歌劇場合唱団でしたが、今回は晋友会。2023年1月にオペラ「カルメン」の公演があったので前回は合唱団も来ていたけど、今年は年明けにバレエ公演しかないので合唱団は来てないのでしょう。

 晋友会合唱団は、いくつかのアマチュア合唱団によって組織されておりますが、プロのコンサートにもしばしば出演し、高評価を得ております。迫力ある素晴らしい歌声でしたが、ちょっと声質が荒かった気もします。

 座席は今回は1階5列目の席を取ったのですが、1,2列目の椅子は舞台拡張のため撤去されていて、実質3列目。ちょっと前すぎるかなーと思っていたのですが、音が質の悪い録音を聴いているみたいにくぐもって聞こえ、管楽器もあまり聞こえず、残念な席でした。

迫力不足の「運命」

 最初のジャジャジャジャ〜ンが、音が小さく迫力がなくてがっかり。オケの人数が少ないせいか、席の音響が悪いせいかよくわかりませんが。アンサンブルもちょっと乱れがち。ぽん太も年末の疲れのせいで、何回か意識を喪失してしまいました。

気魄のこもった「合唱」が感動を呼ぶ

 休憩時間に「こんなもんかな〜、まあウィーンフィルベルリンフィルと比べちゃいかんもんな〜」などと思っておりましたが、後半の第九は打って変わって良かったのでびっくりしました。ぽん太の脳の調子が打って変わって良くなっただけかもしれませんが。

 ニコラ・ジャジューラの式は、昨年同様早めのテンポで、全体の流れを重視して大きくまとめていく感じ。ところどころで緩急や音量のニュアンスを加えてました。オケも第九の複雑な合奏を見事に演奏していたように思います。

 ただ、第三楽章のトランペットの警告のところは、夢から覚めさせられて呆然とするような感じがありませんでした。

 ジャジュールの力が一番こもっていたのは、第4楽章のチェロとコントラバスによるレチタティーヴォがこれまでの三つの楽章を否定するところ。彼は真剣な表情で握り拳を振り回し、唸り声を上げながら奏者を鼓舞しておりました。なんでここでこんなに力を入れるのかぽん太にはわかりませんでしたが、その迫力に気圧されました。

 バリトン(本公演ではバス)のレチタティーヴォは、昨年のセルゲイ・マゲラの地響きするかのような低音が印象的でしたが、今回のセルゲイ・コブニールも見事な重低音を聞かせてくれました。またソプラノのリリア・フレヴツォヴァも素晴らしかったです。

 合唱が加わってからは、天井が高い東京オペラシティーコンサートホールで聴いていると、まるで天から声が降り注いで来るかのようで、とても神々しかったです。

 瓦礫の中で立ち上がった市民が小さな声で歌い始めたかのような「歓喜の主題」が、さまざまな楽器や合唱が加わって大きな力強い声となっていき、最後には天上の神の世界の音楽と合わさって喜びと友愛を唄い上げる「第九」ウクライナやガザの現状やベートーヴェンの思いが頭の中を渦巻いて、最後には音響の悪さやオケが小編成なこともどうでもよくなって、ぽん太はとっても感動しました。

公演情報

第九&運命 ウクライナ国立歌劇場管弦楽団

2023年12月30日
東京オペラシティーコンサートホール

公式サイト:https://www.koransha.com/orch_chamber/daiku/

曲目 ベートーヴェン交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
   ベートーヴェン交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

指揮:ニコラ・ジャジューラ
演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
   ソプラノ:リリア・フレボツォヴァ
   メゾソプラノ:イリーナ・ペトロヴァ
   テノール:オレグ・スラコマン
   バス:セルゲイ・コヴニール
   晋友会合唱団