コロナの第8波が下火になったので、新国立劇場に「タンホイザー」を観にいて来ました。
前回オペラを観たのが2021年11月、新国立の「マイスタージンガー」ですから、なんと1年3ヶ月ぶり。久々のオペラは、す・ば・ら・し・かったです。ぽん太はいつも4階席ですが、こんかいはぎりぎりでチケットをとったので、豪華に3階席。舞台も良く見え、音もよく届きました。
新国立の「タンホイザー」を観るのは、2013年、2019年に続き3回目。見慣れたブロダクションのはずでしたが、いろいろと初めて気がつくことが多かったです。ヴェーヌスベルクで映像が映し出されるのもその一つで、4階からだと舞台奥がよく見えませんでした。
コロナ対策としては、ドリンクとビュッフェがホワイエの奥側に集められていて、休憩時間にはワインやコーヒーを求める巡礼者の長い列ができてました。ぽん太もシュークリームを求めて巡礼に加わりましたが、どんどん進むので思ったほどは待たされなかったです。
新国立ではおなじみのステファン・グールドのタンホイザーは、いつもながら素晴らしかったです。特に法王から許しを得られなかったことで闇堕ちする「ローマ語り」は心を打ちました。
二人の女性歌手も見事で、ヴェーネスのエグレ・シドラウスカイテは、男を愛欲に陥れる妖艶さは薄いけど、なかなかの美人。サビーナ・ツヴィラクのエリーザベトは、第三幕の清楚さと自己犠牲の愛が感動的でした。
対してヴォルフラム役のデイビッド・スタウトはなんか声が不安定で、「夕星の歌」の誠実さ、敬虔さ、いい人っぽさ(「ドン・ジョバンニ」のドン・オッターヴィオみたいな感じ?)が感じられませんでした。
日本人では、牧童の前川依子のよく響く透明感のある声に驚かされました。まるでパンの笛のごとし。ドロドロのヴェーヌスベルクを逃れて戻ってきた故郷の、平穏さ・美しさ・いとおしさが感じられ、悪夢から覚めたかのような劇的印象を与えてくれました。
妻屋秀和も声量あるバスで、領主ヘルマンの威厳と慈悲を感じさせてくれました。
アレホ・ペレス指揮、東京交響楽団の演奏は、ちょっと物足りなかったです。序曲の出だしから金管が不安定。音の重厚さに欠け、ワグナー独特の地面から湧き上がってくるような迫力がありませんでした。指揮者のせいなのか、オケのせいなのか、ホールの音響のせいなのか、ぽん太にはよくわかりません。叙情的で繊細な部分は美しかったです。
このプロダクションのバレエは、古典的な振り付けで群舞的な面白さもなく、オペラファンにはいいのかもしれませんが、バレエファンでもあるぽん太には物足りないのは、いつものこと。
新国立劇場合唱団は今回も凄い声量で迫力満点。オケを圧倒して、ワグナーらしい重厚さを味わわせてくれました。
2023年2月12日
新国立劇場 オペラパレス
スタッフ
【指揮】アレホ・ペレス
【演出】ハンス=ペーター・レーマン
【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
【照明】立田雄士
【振付】メメット・バルカン
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】髙橋尚史
キャスト
【領主ヘルマン】妻屋秀和
【タンホイザー】ステファン・グールド
【ヴォルフラム】デイヴィッド・スタウト
【ヴァルター】鈴木 准
【ビーテロルフ】青山 貴
【ハインリヒ】今尾 滋
【ラインマル】後藤春馬
【エリーザベト】サビーナ・ツヴィラク
【ヴェーヌス】エグレ・シドラウスカイテ
【牧童】前川依子
【4人の小姓】和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希