ぽん太のよりみち精神科

たんたんたぬきの精神科医ぽん太のブログです。ココログの「ぽん太のみちくさ精神科」から引っ越してまいりました。以後お見知り置きをお願いいたします。

映画「RRR」実在の独立指導者をモデルに「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」の神を重ね合わせる

 コロナ第8波が収まってきたので、今更ながらですが話題の映画「RRR」を観てきました。

  VFXを駆使したこれまで味わったことのない映像体験。まったく先が読めないストーリー展開。これでもかと繰り出されるアイディア。もちろんキレッキレのダンスもあり。素晴らしいエンターテイメントでした。

 途中休憩を挟んで3時間の長丁場、まったく眠くならず、買ってきたポップコーンを食べる間もなく、最後まで見続けてしまいました。

 ストーリーも長大で、1時間半で休憩に入った時「え?これで終わりなんじゃないの?」と思ったのですが、そこからまた新たな物語が始まり、一層パワーアップしてラストを迎えました。

 もう、お腹いっぱいです。

 

 1920年代のイギリスに支配されていたインドが舞台。実在のインド独立運動の指導者コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーマ・ラージュを主人公とした架空の物語ですが、このあたりはすでに様々なブログで論じられているようなので繰り返しません。

 ラスト近くになると、ラーマは上半身裸、下半身にはオレンジ色の布を纏った姿で弓矢で次々と敵を射抜いていくし、ビームは自動車をブンブン振り回し、なんかもう設定崩壊というか、なんでもありです。

 実はこの映画は、独立運動に加えて、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」という古代インドの二大叙事詩を踏まえているんだそうです。 ぽん太は実は『マハーバーラタ』は読んだことがあります。昔、長い物語を読むのをマイブームとしていたことがあるのです。今は絶版ですが、ちくま学芸文庫で出ていた上村勝彦訳の全8巻です。むちゃくちゃ値段が上がってますね。

 現在は下のリンクのKindle版(山際素男訳)が手に入りますが、電子書籍が苦手な方は、ちくま学芸文庫を図書館で借りて読む方法もあるかと思います。

 で、この物語、要するにある一族が二手に別れ、何代にもわたって繰り広げる大戦争を描いたものなのですが、あちこちに後から挿入されたと思われる物語が入っていたり、ヒンズーの聖典みたいな部分があったりあします。このなかに出てくる怪力の英雄ビーマ(あるいはビーマセーナ)が「RRR」のビームと重ね合わされているようで、ビームが車を振り回すほどの怪力を現したのも理解できます。

 ちなみにぽん太はもう読む気が起きませんでしたが、もう一つの叙事詩ラーマーヤナ』の主人公ラーマが「RRR」のラーマと重ね合わされています。


 上が『ラーマーヤナ』のラーマですね(ラーマ - Wikipediaからパブリックドメインの画像です)。上半身裸で弓を持つ姿は映画のラーマとよく似ています。

 映画でラーマは、祀られている像から弓と矢を借り受けますが、この像が『ラーマーヤナ』のラーマの像なんだそうです。

 『ラーマーヤナ』のラーマは、奪われた妻シータを取り戻そうと大群を率いて戦うのですが、映画のラーマの婚約者の名前がシータでしたね。

 ところで、映画のラーマのモデルであった実在のシータラーマ・ラージュは、アッルーリ・シータラーマ・ラージュ - Wikipediaによると、もともとはラーマという名でしたが、若い頃にシータという恋人が亡くなってしまったことからシータラーマと名乗るようになったそうです。シータラーマは当時から『ラーマーヤナ』のラーマと重ね合わされて、「矢を空から降らすことができる」とか「弾が当たらない」とか「不死身である」とか信じられていたそうです。


 Wikipediaに出ていたシータラーマの像ですが、上半身裸で弓を持っており、どう見ても『ラーマーヤナ』のラーマですよね。

 しかしこの辺は、深入りすると大変なことになりそうなので、ここらで寄り道はやめておきましょう。

 

 しかしこの映画、イギリスが徹底的に悪人に描かれていますが、よくイギリス人は怒らなかったですね。

 これを見ると、中国や韓国で日本軍を極悪非道に描く映画が作られていても、日本人は怒っちゃいけないのかもしれません。

 

「RRR」

2022年/インド

スタッフ
【監督】 S・S・ラージャマウリ
【原案】 V・ビジャエーンドラ・プラサード
【脚本】 S・S・ラージャマウリ
キャスト
【コムラム・ビーム】N・T・ラーマ・ラオ・Jr.
【A・ラーマ・ラージュ】ラーム・チャラン
【ヴェカンタ・ラーマ・ラージュ】 アジャイ・デーブガン
【シータ】 アーリアー・バット
【スコット・バクストン】レイ・スティーブンソン
【キャサリン・バクストン】アリソン・ドゥーディ