ぽん太のよりみち精神科

たんたんたぬきの精神科医ぽん太のブログです。ココログの「ぽん太のみちくさ精神科」から引っ越してまいりました。以後お見知り置きをお願いいたします。

醍醐寺伝来の平安仏、如意輪観音像と二童子像が加わった半蔵門ミュージアム常設展

 半蔵門ミュージアムに京都醍醐寺伝来の平安仏、如意輪観音菩薩坐像と二童子像が加わったと聞き、見に行ってきました。

 これらの仏像が加わるのは常設展なので、今後は継続的に拝観できることになります。なかなか見事な仏像で、こうした仏像を無料で拝観できるとは有り難い限りです。

 なお、それを記念して「初公開の仏教美術 如意輪観音菩薩像・二童子像をむかえて」という特別展が行われておりますが、こちらに展示されているのは墨書や絵画、中国の石仏などです。

京都の醍醐寺半蔵門ミュージアムに寄贈

半蔵門ミュージアム真如苑

 半蔵門ミュージアムは、宗教団体真如苑が所有するビルの中にあります。このミュージアムは、真如苑が所有する仏像を展示するために、2018年に開設されました。

 真如苑は仏教の真言宗系の宗教団体で、本部は東京都立川市にあります。元々は1936年に開創されましたが、1951年に名称が真如苑に変更され、1953年に宗教法人の認証を受けました。芸能人の信者も多いようですね。

 2008年、運慶作と言われる大日如来像が海外オークションにかけられ、あわや海外流出かと騒がれましたが、真如苑が落札して流出が食いとめられました。仏像はしばらく東京国立博物館に寄託されたのち、新たに造られた半蔵門ミュージアムで公開されることになりました。なんと入場無料。海外のお金持ちの私的コレクションになって死蔵されたりせず、多くの人が拝観できるかたちとなって良かったです。

半蔵門ミュージアム醍醐寺

 真如苑の開祖が京都の醍醐寺で修行をしたことから、真如苑醍醐寺は関係が深いようです。

 醍醐寺京都府伏見区にあり、真言宗醍醐派の総本山。広大な境内を持ち、国宝を含む数々の文化財を有しています。公式サイトはこちらです(世界遺産 京都 醍醐寺)。ぽん太の醍醐寺に関する過去のブログを下にリンクしておきます。

【仏像】国宝薬師三尊、五大明王など。醍醐寺(京都): ぽん太のみちくさ精神科

【仏像】「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」サントリー美術館: ぽん太のみちくさ精神科

 半蔵門ミュージアムには、以前から醍醐寺伝来の不動明王が展示されておりましたが、今回さらに如意輪観音と二童子像が寄贈され、修復を経て展示されることになりました。

新たに加わった醍醐寺伝来の平安仏

外国っぽいお顔で珍しい座り方の如意輪観音

 この如意輪観音さまにお会いして驚くのは、外国風な顔立ちと、不思議な座り方です。

 お顔は今回の修復時に、後世に顔に塗られていた木屎漆(こくそうるし:粉末にした木に漆を混ぜてペースト状にしたもの)を除去したところ、このような外国風のお顔が現れたそうです。平安時代の10世紀に作られたということで、ガンダーラ風の仏像の影響が残っているのでしょうか。

 次に座り方ですが、普通は如意輪観音は「輪王坐」(りんのうざ)という座り方をします。

 上の写真はWikipediaから滋賀県園城寺如意輪観音です。右膝を立て、左足の裏の上に、右足の裏を乗っけてます。右手は右膝の上に乗せ、左手は地面についてます。安定してゆったりとした姿勢ですね。

 ところが今回の像は、左足は下に垂らし、右足の甲を左足の腿の上に乗せ(半跏踏下坐:はんかふみさげざ)、そこから右膝を上に持ち上げたかたちです。この姿勢をとるには、右腿の内側や右脇腹の筋肉にかなり力を入れる必要があります(みんなも真似してみよう)。なんか不安定で不自然なポーズですが、密教的なパワーと神秘性が感じられます。

平安後期らしいおっとりした二童子

 矜羯羅童子と制多伽童子の二童子像は、平安後期らしいおっとりとして雅やかなお姿。たとえば伊豆の願成就院鎌倉時代の運慶のリアルで躍動的な姿(寺宝 | 天守君山 願成就院 公式ホームページ)とは全然違いますね。

 この二童子は、通常は不動明王の両脇に置かれるのが普通で、まとめて不動三尊像と呼ばれます。実際この二童子は、先に半蔵門ミュージアムにいらっしゃっていた不動明王坐像が醍醐寺にいた頃、その両脇に置かれて不動三尊像として祀られていました。しかしこれらは当初からセットで作られたものではなく、本来別々のものが組み合わされたものだそうです。

 今回二童子半蔵門ミュージアムに来たことで、醍醐寺の仲間たちがまた顔をあわせることになりました。但し不動三尊像の形式ではなく、不動明王の右側に二童子が安置されておりました。

その他の気になった出品作

 運慶作の可能性が高い大日如来(10)は、何度見ても素晴らしかったです。

 隣に新たに、X線内視鏡によって明らかになった、大日如来の像内納入品の模型が展示されておりました。この納入品があることが、運慶作と言われる根拠のひとつにもなっているそうで、とても興味深かったです。

 また特別展の江戸時代に描かれた刀八毘沙門天(20)は、よく見る毘沙門天の進化形といった感じで、顔が3つ手が10本あり、8本の刀を振りかざし、獅子の上に乗るといったもの。なんか仏さまというよりキャラという感じでした。

 大正時代の山崎弁栄作の阿弥陀三尊像(22)の墨画がありましたが、山崎弁栄(やまざきべんんねい)といえば、明治から大正にかけて浄土宗の社会運動である光明主義運動(こうみょうしゅぎうんどう)を行なって人で、光明主義は以前にちょっと関心を持ったことがあったので、興味深かったです。

 

半蔵門ミュージアム
2023年11月22日〜

料金:無料
公式サイト・https://www.hanzomonmuseum.jp
チラシ・初公開の仏教美術.pdf
出品目録・出品目録.jpg

【仏像の出品作】○重要文化財

10 ○ 大日如来坐像 木造 漆箔 玉眼 像高61.6cm 鎌倉時代 建久4(1193)?
11   如意輪観音菩薩坐像 木造 古色塗り 像高136.5cm 平安時代 10世紀
12a 不動明王坐像 木造 彩色 像高82.7cm 平安時代 12世紀
12b 不動明王像 光背・台座 康正作 木造 彩色・漆箔 江戸時代 慶長11(1606)年
13   二童子立像 木造 彩色・截金 像高 矜羯羅童子94.0cm 制多伽童子94.5cm 平安時代 11〜12世紀