オランダ人役のエフゲニー・ニキティンが気管支炎で休演したのが残念でした。河野鉄平が代役を勤めましたが、声量や表現力がニキティンに及ばないのは仕方ありません。急な交代なのに主役を全幕歌い切ってくれたことに感謝したいです。カーテンコールでブーイングをした客もいましたが、近くの人がブラボーで打ち消してました。
外人歌手たちは、バランスを取るために声量を押さえたりせず、ガンガン歌ってましたが、この場合はそれでいいのでしょう。
ゼンタ役のエリザベート・ストリッドは、小柄でコロッとした体型で、可愛らしい村娘といった風情で、さまよえるオランダ人伝説のおどろおどろしさにはちょっと欠けました。ジョナサン・ストートンのエリックは好青年らしく、好感が持てました。久しぶりに聴いたダーラント役の松位浩の深いバスや、舵手役の伊藤達人の透明感のあるテノールも良かったです。
マルク・アルブレヒト指揮による東京交響楽団の演奏は、重々しすぎずにスマートな印象でした。
ということで今回の舞台の圧巻は新国立劇場合唱団。水夫たちの合唱や、糸を紡ぐ娘たちの歌もすばらしかったですが、なんといっても第3幕の幽霊船の船乗りたちの歌が圧巻でした。真っ赤に染まった帆が旗めくなか、地響きするような咆哮が心底恐ろしかったです。
演出はすでに何回か上演されたもの。変な読み替えはせずオーソドックスながらも、船の舵輪と糸車で3つの幕を関係づけたりして悪くないと思います。
公演情報
リヒャルト・ヴァーグナー
「さまよえるオランダ人」
2025年1月29日
新国立劇場オペラパレス
公式サイト・https://www.nntt.jac.go.jp/opera/derfliegendehollander/
【指 揮】マルク・アルブレヒト
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美 術】堀尾幸男
【衣 裳】ひびのこづえ
【照 明】磯野 睦
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】髙橋尚史
【ダーラント】松位 浩
【ゼンタ】エリザベート・ストリッド
【エリック】ジョナサン・ストートン
【マリー】金子美香
【舵手】伊藤達人
【オランダ人】河野鉄平
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団