ぽん太のよりみち精神科

たんたんたぬきの精神科医ぽん太のブログです。ココログの「ぽん太のみちくさ精神科」から引っ越してまいりました。以後お見知り置きをお願いいたします。

菅井円加のキトリに驚く/世界バレエフェスティバル2024 Bプログラム

 先週のAプロに続き、Bプロを鑑賞。

 第1部は「ライモンダ」から。踊るのはボリショイを2017年に退団したアレクサンドロワと、現役の団員のラントラートフ。こんな時代だけど、一流のロシアバレエを堪能することができて良かったです。早く平和が訪れてほしいですね。

 続いてゴメスとリアブコの「アミ」。男性二人の踊りだけど、同性愛的な雰囲気はなく、長きにわたって苦楽を共にしてきたダチ、という感じかな。ダンディで男っぽいゴメスと、抽象的・造形的なリアブコの動きの対比が面白かったです。振付はゴメス。振付もするんですね。

 ついでブラウンとフィゲレドのシュツットガルト・ペアによる「ア・ダイアローグ 」。悪くはなかったけど、炎天下のなか涼しい会場に入って、昼食後で、コンテで、暗いでしょう。記憶が途切れとぎれです。

 続いて「ジュエルズより"ダイヤモンド" 」。キム・キミンはAプロでは素晴らしい身体能力を披露してくれましたが、Bプロではノーブルな美しさを披露。永久メイも素晴らしかったです。

 「バクチⅢ 」は、ベジャールが振付たインド舞踊風な作品。男女はヒンドゥー教シヴァ神と、その妻シャクティであるらしい。いきなり男女交合を表すミトゥナのポーズから始まってぽん太はびっくり。ベジャールはエロティックな表現も多いから、ま、いいのかな。1968年初演だそうで、早い時期の作品ですね。彼の世界を堪能することができました。踊ったのはベジャール・バレエ・ローザンヌNBSではなぜかモーリス・ベジャール・バレエ団と呼ぶ)の大橋真理とアレッサンドロ・カヴァッロ。もちろん二人ともベジャールがこの世を去ってからの入団。時は流れる。東京バレエ団の男性が加わっていました。

 第1部の〆はヌニュスとムンタギロフの「海賊」。Aプロのドンキではムンタギロフはあまり目立ちませんでしたが、今回は能力解放! 見たことない変わった空中姿勢を見せてくれました。ヌニュスも素晴らしく、感動しないわけにはいきません。

 

 第2部に入って、オニール八菜とルーヴェの「ソナチネ」。う〜ん、キレイなんですけど〜。表情がない、感情がない、ドラマがない。もっと一編のなかに様々な出来事があってもいいような気がするのですが……。

 待ってました「ロミオとジュリエットより第1幕のパ・ド・ドゥ 」。サラ・ラム とブレイスウェルの二人は、踊りもさることながら、まるで映画の一場面のようなビジュアル。ありがとうございました。ただちょっとウルウル感に欠けたような気もするけど。

 「マーラー交響曲第3番 」では、菅井円加のコンテンポラリーを楽しむことができました。Aプロの「ハロー」は、ぽん太はちょっと振付が好みではありませんでしたが。トルーシュとも息が合ってて、すばらしいダンスでした。

 英国ロイヤルのナグディとクラークによる「マノンより第1幕の寝室のパ・ド・ドゥ 」。さまざまなリフトを含むマクミランの振付が素晴らしいです。ロミジュリも見れたし、もうお腹いっぱいです。

 ベジャール振り付けの「ニーベルングの指環 」。ジル・ロマンはAプロでは両手を動かすばかりでもう踊れないのではないかと心配しましたが、大丈夫なようで安心しました。しかしこの赤い髪の毛のキャラ、マクドナルドのドナルドというか、昔のロンドンブーツ淳というか。踊りの意味がよくわかりませんでした。お相手はヴィシニョーワです。

 

 3部の最初の演目は、フェリとボッレの「ル・パルク」。Aプロにもあった演目なので、Bプロは違う場面かと思ったら、同じ「解放のパ・ド・ドゥ」だったのでちょっとびっくり。ただ二人の衣装はナチュラルで簡素で、オリジナルのルイ王朝時代のエロティシズムは消え去っており、静けさと穏やかな愛が感じられる名演でした。

 打って変わって荒々しくダークな「うたかたの恋より第2幕のパ・ド・ドゥ 」。フォーゲルは期待通りの好演。バデネスのマリーは可愛すぎるんじゃないかと思いましたが、はしゃぎながら天井に向けてピストルをぶっ放すところには恐怖を感じました。

 次は「欲望」。ぽん太の推しのリアブコ、Aプロのウィールドン振付の「マーキュリアル・マヌヴァーズ」ではいいところを見れなかったけど、「欲望 」では彼特有の身体表現を堪能できました。やっぱりノイマイヤーの振付がいいのかな〜? アッツォーニも良かったです。

  「オネーギンより第3幕のパ・ド・ドゥ 」はガラの定番ですね。ジルベールとマルシャンが踊りました。悪くなかったですが、いまさら言い寄ってくるオネーギンの邪悪さがあまり出てなかった気がします。

 さあ、トリは「ドン・キホーテ 」。コンテンポラリーでは定評ある菅井円加がキトリちゃんをどう踊るのか、ぽん太はとっても楽しみにしておりました。
 す・ば・ら・し・かったです。緊張も感じられず、手慣れた感じで堂々と踊ってましたね。安定感があり、バランスもAプロのヌニュスより長かったかも。グラン・フェッテも前半は全部ドゥブル! すごいテクニックを持ってるんですね。あとは軽やかさと、スペイン的なキメとかがあれば完璧だと思います。まだまだこれからが楽しみです。シムキン君も安定したパーフェクトな踊りでした。

 

 今年も真夏の祭典・世界バレエフェスティバルが終わりました。次回は3年後。平和が訪れて、久々登場のロシア・ダンサーたちに拍手喝采を送りたいです。

 

世界バレエフェスティバル2024 Bプログラム

東京文化会館
2024年8月10日
公式サイト

― 第1部 ―

ライモンダ
振付:マリウス・プティパ 音楽:アレクサンドル・グラズノフ
マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ

アミ
振付:マルセロ・ゴメス 音楽:フレデリック・ショパン
マルセロ・ゴメス
アレクサンドル・リアブコ

ア・ダイアローグ
振付:ロマン・ノヴィツキー 音楽:ニーナ・シモン
マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィゲレド

ジュエルズより"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・チャイコフスキー
永久メイ
キム・キミン

バクチⅢ
振付:モーリス・ベジャール 音楽:インドの伝統音楽
大橋真理
アレッサンドロ・カヴァッロ
東京バレエ団

海賊
振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリゴ
マリアネラ・ヌニュス
ワディム・ムンタギロフ

― 第2部 ―

ソナチネ
振付:ジョージ・バランシン 音楽:モーリス・ラヴェル
オニール八菜
ジェルマン・ルーヴェ

ロミオとジュリエットより第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
サラ・ラム
ウィリアム・ブレイスウェル

マーラー交響曲第3番
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:グスタフ・マーラー
菅井円加
アサクサンドル・トルーシュ

マノンより第1幕の寝室のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク

ニーベルングの指環
振付:モーリス・ベジャール 音楽:リヒャルト・ワーグナー
ディアナ・ヴィシニョーワ
ジル・ロマン

― 第3部 ―

ル・パルク
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ 音楽:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

うたかたの恋より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 音楽:フランツ・リスト 編曲:ジョン・ランチベリー
エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル

欲望
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:アレクサンドル・スクリャービン
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

オネーギンより第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:ピョートル・チャイコフスキー 編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン

ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ 音楽:レオン・ミンクス
菅井円加
ダニール・シムキン

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 滝澤志野(「アミ」、「ソナチネ」、「ル・パルク」、「欲望」)