ぽん太のよりみち精神科

たんたんたぬきの精神科医ぽん太のブログです。ココログの「ぽん太のみちくさ精神科」から引っ越してまいりました。以後お見知り置きをお願いいたします。

西山温泉「慶雲館」ギネス認定世界最古の宿。豊富な湯量で完全源泉掛け流し。


 世界最古の宿としてギネスに認定されている、山梨県の西山温泉「慶雲館」に泊まってきました。南アルプスの登山口に近い標高800mにある宿。湯量が豊富なためすべて源泉掛け流し。部屋の洗面台のお湯も源泉です。お料理も手が込んでいて大変美味しく、おすすめの宿です。

 

途中の山道はリニア新幹線の工事でトラックだらけ

 甲府盆地から南に富士川沿いに下っていくと、下部温泉で有名な身延市に至ります。そこから西側の南アルプスの麓を、支流の早川に沿って登っていきます。
 この道、農鳥岳の登山口の奈良田を過ぎると細い林道になってしまう先細りの道なのですが、なぜか2車線の舗装道路になっていて、ダンプがすごいスピードで次々と行き来しています。所々に、建設中なので何かはわかりませんが、巨大な構造物が造られています。
 何だろうと思っていると、「中央新幹線工事」と書かれた看板が目に入りました。リニア新幹線のトンネル工事が行われているのですね。
 ルート・工事マップ|リニア中央新幹線|JR東海を見てみると、完璧に下を通ってますね。西山温泉のやや南側をトンネルが東西に貫いており、道沿いに非常口が造られるようです。

山奥とは思えない立派な和風建築


 さて、山道を車で登っていくこと50分、34kmの道のりを経てようやく西山温泉慶雲館に到着します。標高は800m。山深いところにあるとは思えないきれいで立派な建物で、鉄筋コンクリート造ではありますが、おちついた和風旅館です。


 広々としたロビーです。建物は4階建てですがこのフロアーは実は3階で、傍を流れる早川の崖に沿って1階と2階があります。

ギネス認定世界最古の宿


 フロントにギネスの認定証が飾ってありました。現在まで営業を継続している最古の宿として、2011年に認定されたようです。西暦705年から営業とのことですから、奈良時代より前です。

 よく「世界最古の温泉旅館」と紹介しているサイトがありますが、「温泉旅館」としてではなく、「旅館」として最古です(もちろん温泉旅館としても最古ということになりますが)。
 開業のいわれに関しては、慶雲館のホームページに書かれています(慶雲館について | 全館源泉掛け流し 西山温泉 慶雲館)。藤原鎌足の長男である藤原真人(ふじわらのまひと)は、僧となって定恵(じょうけい)とも名乗り、唐にも渡りました。後年には身延周辺を流浪し、土地の娘と結婚して双子を儲けました。文武天皇の御代の慶雲2年(705年)、真人は狩猟の途中に噴き出す熱湯を見つけました。試しに入ってみてその薬効に驚き、湯つぼを作り道を切り開きました。名湯の噂は次第に近隣に広がり、奈良時代には孝謙天皇、戦国時代には武田信玄も訪れ、徳川家康も2回入湯したと言われているそうです。
 お、おっしゃることはわかりました……。が、問題はそれを裏付ける資料があるかどうかです。宿のホームぺージには書かれておらず、ググってみても見つかりません。また、定恵 - Wikipediaを見ても、温泉を見つけたなどとは書かれておらず、温泉を発見したという705年よりはるか以前の665年に亡くなったと書かれています。おや?脚注に『元亨釈書』には714年に亡くなったと書かれているとのこと!しかし定慧上人(定恵) - 浄土宗大念寺ホームページによると、『元亨釈書』では定恵の唐からの帰国を708年としており、うまく数字が合いません。
  どうも地域の言い伝えが後に文書化されたものが典拠のような気がします。してみるとギネスの最古の宿部門は、史実かどうかは問わないようですね。
 ちなみに2011年の慶雲館ギネス認定前に1位だったのも日本の温泉旅館で、718年(養老2年)開湯の石川県の粟津温泉「法師」だそうです(群馬県法師温泉とは別ですネ)。

早川に臨む落ち着いた和室


 客室は新しくきれいな和室で、とても落ち着きます。
 最近はコロナの感染防止対策と人員削減から、あらかじめ布団が敷いてあり、上げないシステムのところが多いですが、慶雲館では布団は夕食中に敷いてくれて、朝食の間に上げてくれるなど、サービスが充実してます。フロントやお食事処も含めて東南アジア人の女性が多く働いており、その分従業員数が多いように思います。彼女らはとっても日本語が上手で、おもてなしも行き届いて、逆に日本の昔の旅館を思い出します。しかし、彼女たちの語学力はすごいですね。ぽん太が外国の旅館で働けけと言われたら、絶対にできません。


 窓の外には早川が流れています。水量は多くないですが、南アルプスから流れ出したばかりとあって、大きな岩がゴロゴロしてます。早朝の写真なので、谷底はまだ暗いですが、かなたの2000m級の稜線は朝日でオレンジ色に輝いてます。

完全源泉掛け流しのアルカリ性温泉


 温泉ですが、眺めのいい4階に2つの内湯と1つの露天風呂、渓流を間近に臨む1階に1つの露天風呂と2つの貸切風呂があります。内湯と露天風呂は時間制で男女入れ替えになっており、貸切風呂は1回無料で入れますので、全部で5つのお風呂に入れることになります。
 上の写真は貸切風呂のひとつ川音(かわね)です。名前の通り間近に早川の渓流が流れてます。これだけの広いお風呂を無料で貸しきれます。
 冒頭の写真が4階にある望渓の湯。高野槙の浴槽で、昼は南アルプスの山、夜は満天の星を楽しめます。 なんと全てのお風呂が、加水・加温・循環・消毒なしの完全源泉掛け流し。豊富な湯量があればこそです。
 お湯は無色透明ですが、わずかに硫化水素臭があり、かすかに甘塩っぱい感じ。しかし浴槽には白い結晶が析出しており、成分が濃いことがわかります。お肌すべすべの美人の湯系です。
 けっこう宿泊客が多く、他のお風呂は写真が撮れませんでした。ぜひ宿のホームページをご覧ください(温泉 | 全館源泉掛け流し 西山温泉 慶雲館)。内湯も眺めが良くて広々してます。


 温泉分析書は二つあります。こちらの源泉名は「慶雲館(目湯、穴湯、御座湯、御殿湯)」となっております。泉温40.3度、毎分183リットルの自噴、ph9.1で。こちらが昔からある源泉ですね。細かくは4本の源泉からなっているようです。奈良時代以前から湧き続けているのでしょうか? 泉質は「アルカリ性単純温泉」ですから、成分はあまり濃くなさそうです。


 こちらが2005年に新たに掘り当てた源泉「慶雲の湯」です。泉温は50.9度と高温。pH9.2とやはりアルカリ性。掘削自噴で、湧出量は「測定不能」と書かれていますが、宿のホームページによると毎分1600リットル以上とのこと。すごい量です。泉質も「ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物泉」で成分が濃いです。
 どの浴槽にどの源泉が注がれているのか明示されていなかったのですが、混合して注がれているような気がします。露天風呂系は湯温が高く設定されてましたので、「慶雲の湯」が主体になっている気がします。浴槽に析出した結晶も多かったです。
 さらには管内のカランのお湯も、全部源泉掛け流しです!

手の込んだお料理にはA5ランク甲州牛も


 夕食はお食事どころでいただきます。まずはスターティング・ラインナップ。ゼリーみたいなのは卵の黄身で琥珀卵というんだそうです。器もいいですね。黒織部でしょうか。


 こちらがお品書きです。


 ヤマメの塩焼きはカラッと焼き上がっています。水分を含んで柔らかに焼かれているヤマメやイワナをよく見かけますが、あれはガス火で焼いたやつ。ガス火は水分を含んでますからね。炭火で焼くと水分が飛んでカラッとした感じになり、これがヤマメやイワナの本来の焼き方で、評価のポイントです。
 写真奥にあるのは「どんぐり麺」。ごま油が入った麺つゆでいただきます。宿の売店で販売されてております。


 メインはA5ランクの甲州牛溶岩焼き。ロース、サーロイン、カルビの食べ比べです。どれもとっても柔らかくて、脂も口の中で溶けていきます。


 こちらが朝食です。小皿がいっぱいあって嬉しいですね。右上の手作り豆腐がとっても濃厚で美味しかったです。

 

基本情報

西山温泉 慶雲
住所:山梨県南巨摩郡早川町西山温泉
公式サイト:https://www.keiunkan.co.jp
温泉:完全源泉掛け流し 加温(-)加水(-)循環(-)消毒(-)
泉質:ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物泉、アルカリ性単純温泉
料金:プラン名【冬春旅セール】甲州黒毛和牛A5・全館源泉掛け流し・ギネス認 定世界最古の宿、2名1室、1人21,945円