シュツットガルト・バレエ団による「オネーギン」を観に行った感想をお届けします。よくガラ公演で踊られる 「鏡のパ・ド・ドゥ」や「手紙のパ・ド・ドゥ」などが印象的で、ぽん太はぜひ全幕を観たいと思っていましたが、ようやく願いがかない、期待通りの素晴らしさでした。
今回のキャストは、オネーギン役がジェイソン・レイリー、タチヤーナ役がアンナ・オサチェンコ、そしてレンスキー役ががダニエル・カマルゴ。 このカマルゴの踊りが特に印象的で、最初のパ・ド・ドゥをふわっと踊り始めたとき、まるでそよ風が吹いたかのような感じがしました。樹木の細かい梢や葉、建物内部のレースなど、繊細なセットも相まって、ロシアの美しい情景が広がっていました。
オネーギン役のレイリーは、ベジャールバレエ団にでもいそうなちょっと性格俳優的なダンサーで、オネーギンの偏屈な感じがよく出てました。
第一幕の「鏡のパ・ド・ドゥ」はガラ公演では何度も観たのですが、幸せそうなシーンで、どういうシチュエーションなのかこれまでよくわからなかったのですが、タチアーナの夢の中で、タチアーナとオネーギンが踊っているということが初めてわかりました。
先日の『ロミオとジュリエット』でジュリエットを踊っていたエリサ・バデネスがオリガ役。若々しくて、本当はタチアーナの姉ですが、まるで妹みたいでした。舞踏会でのオネーギンとの踊りは、振付だと思うけど、なんかはしゃぎ過ぎに見えて、これではレンスキーが怒るのも無理ないと思いました。
舞踏会でレンスキーがオリガと何度も踊ろうとするのに、その都度さっとオネーギンにさらわれてしまうというクランコの振付は、とてもよくできていると思いました。「ロミジュリ」の舞踏会では、反対に、踊りの中でロミオをジュリエットが何度も出会うという振付があったのが思い出されます。
レンスキー役のカマルゴの、オリガに体する怒りの表現も迫力がありました。オリガを乱暴に揺さぶって、見ていて怖くなるほどでした。 第三幕の手紙のパ・ド・ドゥも、ルグリ/アイシュバルトにはかなわないけど、とても見事でした。タチヤーナのオサチェンコ、をゝと引きつけられるところはなかったけど、悪くなかってです。
ただ、ガラでは意識しなかったのですが、全幕で見ると、ラストでタチヤーナがオネーギンの手紙を破るのが気になりました。第一幕で少女時代のタチヤーナのラブレターをオネーギンが破ったのと対照的に見せているのだと思いますが、これではタチヤーナのただの復讐のような印象を受けてしまいました。第三幕のタチヤーナは、純朴だった少女時代の夢は心の奥底にしまって、成熟した女性としてロシアの貴族社会のなかで生きているわけであり、偏屈でシニカルな第一幕のオネーギンとはまったく違います。タチヤーナは自分の初恋を心に秘めたまま、成熟な女性としてオネーギンを拒むべきだったのでは、と思いました。
シュツットガルト・バレエ団2015年日本公演
「オネーギン」
2015年11月23日
東京文化会館
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
オネーギン:ジェイソン・レイリー
レンスキー:ダニエル・カマルゴ
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:アンナ・オサチェンコ
オリガ:エリサ・バデネス
彼女たちの乳母:ダニエラ・ランゼッティ
グレーミン公爵:ロバート・ロビンソン
近所の人々、ラーリナ夫人の親戚たち/ サンクトペテルブルクのグレーミン公爵の客人たち:シュツットガルト・バレエ団
指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団